俺と葉月の四十九日
闇から、細くて白い両腕が生える様に伸びてきた。

首に絡み付く…冷たい…氷みたいに冷たい感触。

指が確かめる様にゆっくりと、俺の喉仏に両手の親指を重ねてあてる。


…やべえ!


危機感を感じた瞬間、圧力が俺を襲った。


首…絞めてやがる!


徐々に圧力が強くなる。
蛇に締め付けられていくって、こんな風なのか?

苦しい!!
殺される…俺殺される?!

冗談じゃねぇ!


俺…こんな風に突然…静かにここで死ぬなんてよ!



「け……ち…ゃ」


………声?


微かに今、声が聞こえた。

唯一動く目を動かし、今、俺の首を絞めている実体無き殺人鬼ヘと向けた。


途端に俺は、呼吸が詰まる程の光景を目にした!







………安田…?



俺の首を絞めているのは…安田だった。

無表情の安田は両眼を見開いて…ただ首を絞めている。


戻ってきたのか…安田?

何で…何で俺の首を絞めてんだ?


どうして安田が…?


「………圭…ちゃ」


か細い声は、確かに安田の声…でも、今まで聞いた安田の伸びやかな声じゃない。

淋しそうな、切なそうな…やるせない悲痛を含んでいる様な声…。
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