俺と葉月の四十九日
周りを見渡す。


変わらない。

変わらないんだ…安田が死んでも…。


安田が閉じ込められた物置も庭の風景も、何にも変わらない。


小学生の頃、夏休みの観察日記で、この庭に安田と向日葵を植えた。
秋には種がたくさん出てきて、ハムスターを飼っている友達にあげた。

秋には焼き芋を焼いてもらって食べた。


思い出はたくさんある。


ただ…本当の意味で過去。

…何か、ちょっと思い知らされる。


「圭ちゃん?」

インターホンを押そうとした背後から声がした。


圭ちゃん…?


反射的に振り向いてた。
「圭ちゃんじゃないの」
「………あ」


立っていたのは…おばさん。
安田の母親だった。


そうか、安田が俺を圭ちゃんって呼ぶから、おばさんも同じ様に呼んでたんだ。


何となく笑えた。


安田かと期待した俺がいたからだ。
考えたら、自分から隠れたあいつが声掛けてくる訳ない。


「告別式以来だね、おばさん」
「そうね」

おばさんは笑った。

安田は母親似だから、安田が歳をとってたらこんな風だったんだな。


おばさんは買い物に行っていたらしい。
スーパーの袋を両手に歩み寄って来た。
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