俺と葉月の四十九日
リビングから続きの和室に、安田の遺影が掲げられた祭壇があった。

信じられない感覚があった。
けど、部屋中に染み付いた線香の香りが、現実なんだと訴えかける。


たくさんの花、お供え物…遺影は、去年の陸上大会で入賞した時の写真。
右手には銀色のメダルを持ち、笑っている安田。

ハードルで二位を取ったと、さんざん見せられたメダルだからよく覚えてる。
お祝いしてと言われ、メシをおごらされた、無理矢理。


遺影の下の壇には、白い箱…安田の白い骨が入っている。

火葬場でも見たけど、安田の骨は真っ白だった。

事故のせいで肋骨あたりが砕けてしまい、形として残ってはいなかったが、それでも充分、雪みたいに白くて綺麗だった。

火葬場の人も、綺麗な骨だって褒めてたな。
特に頭蓋骨の形が綺麗だって。

何となくその時、俺は誇らしかったんだ。

こいつ…骨になっても人に褒められる奴なんだなぁって。


ため息が漏れた。

覚悟はあったのにな…。

ここに来たら、安田の死を思い知るだろうって覚悟は。


結構キツイ。

まだ俺には、安田が生きていないって実感が無かったせいだ。


笑えるくらいキツイ…。
< 145 / 267 >

この作品をシェア

pagetop