俺と葉月の四十九日
ケーキをつつく俺の前におばさんが出してきたのは…文集。

幼稚園の時の思い出文集。


「すっげえ懐かしい…おばさん、こういうの取ってあるんだ?」

うちの親なんて、取ってあるんだか無いんだか。
安田の奴、こういうマメさをおばさんから見習えば良かったのに。


今更遅いか。
あいつの性格は、がっちりと形成されちまってるから。
記憶喪失にでもならない限り変え様がない。


懐かしさから文集を開く。

“将来の夢”だってさ。

1ページ目は…あ、こいつ覚えてる!
年少組の子のおもちゃを奪って泣かせて、怒った安田に蹴飛ばされて泣いた奴!

安田は正義感があって、男勝りだったから。

夢は…ぶっ!歌手!アイドル系じゃなくて演歌向きの顔だったよ。

マジで懐かしい。


5ページ目に、俺がいた。
夢は警察官。
安田が言ってた通りじゃん!


そういや…拓海の奴も警察官だったんだよな。
あのガキ、天国で元気にしてるかな?


文集のページをすすませる。


あった!安田葉月!


安田の奴、幼稚園の頃の将来の夢を聞いた時、必死で隠してたしな。
それはそれは大爆笑できる夢なんだろう。

期待してるぞ!
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