俺と葉月の四十九日
安田は、抱えた膝へと隠す様に顔を更に伏せた。


「…ちょっと…驚かそうとしただけなんだ」
「驚かす?」

安田はこくんと頷いた。


「圭ちゃん、私がユーレイだって忘れてたみたいだから…ちょっと…怖がらせてあげようかなぁ…て」


顔を上げた安田は笑ってた。

その顔で、俺は瞬時に安田の強がりの嘘だと気付いた。

それは、俺が知る安田の“イタズラ的”な笑顔じゃなかったからだ。


「怒ってるよね?圭ちゃん」


やっぱわかってねぇ!


「ああ、怒ってるよ」
「あはは…やっぱり」


苦笑いの安田…馬鹿野郎!まだ嘘つきやがって!

俺が怒ってんのは、首絞められた事なんかじゃねぇっ!


「お前馬鹿?俺が怒ってんのは、お前の強がりに対してだよ」
「強がり?」
「恐がってたのは安田の方じゃねぇかよ」
「…………」
「震えてたじゃねぇか、バーカ!」


俺の首を絞める安田の手は震えていた。
迷う様にためらう様に、何度も力を抜いてた。


それで俺はわかったんだ。

安田の本心とは違う行動だって…。


どうしていいかわからなかっただけなんだよな?

ただ…ただ安田は…。



「泣きたかったんだろ?」
「……え?」
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