俺と葉月の四十九日
安田と目が合った俺は笑う。

何驚いてんだ。

「お前、昔っから泣きたい時に限って強がんだよな?バレバレだよ。泣きたい時は泣きゃいい、見られたくないなら見ないフリしてやるから」
「……………」


安田は呆然と俺を見つめた。
次の瞬間には吹き出してたけど。


「圭ちゃん、変わんないね」
「何が」

変わらねぇ単純なのは、お前の方だろ。


「子供の頃、私が家出するたびに圭ちゃんはそばに居てくれた。帰っていいって言ってるのに、葉月ちゃんが一緒じゃないなら帰らないって」


…俺、そんな事言ってたの?


「でさ、私が泣くの我慢するとさ、こう言うの。泣きたいなら泣いていいよ?僕ナイショにするからって」


そんな事を圭介少年が?
思わず照れて頭をかいた。


「…よく覚えてんなぁ?」
「恥ずかしいんだ?」
「別に恥ずかしくなんてねぇよ!」
「嘘だぁ、顔赤いもん」


顔?!

両手を頬にあてた俺を見て、安田は更に笑う。


「やっぱ照れてる」
こいつ!それを笑う事ないだろ!
赤いって言われりゃ誰だって焦るだろ!


「っお前さぁ!」

笑う安田…違う、笑ってない。


安田は泣いてた…。
両膝に顔をうずめて…。
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