俺と葉月の四十九日
浮かばねぇ…何にも…。


俺は無知だ…今の安田にかけてやる言葉さえ知らねぇ。
考えても何にも出てこねぇ。

馬鹿だ。

泣く安田を…笑わせてやる事すら!


「でもね、嬉しかった事もあるの…」

手の甲で涙を拭いながら、安田は顔を上げた。


嬉しかった事…?


「ユーレイの私を、圭ちゃんは見てくれた…普通に接してくれて…遊んでくれた」


…それは…お前が変わらず笑っていたから。


「ごめんね…」

安田はまた謝った。

「何で謝るんだ…」


俺はお前に謝られる程、何もしてやってねぇ。

安田は、鼻をすすりながら言葉を続けた。

「圭ちゃんには私が見える…でも、私は死んでいて圭ちゃんは生きてる…」
「………ああ」


それだけは変えようのない事実。


「マオちゃんと楽しそうに話す圭ちゃん見てたら…これからも生きていく圭ちゃんは…いつか私を忘れてしまう…そう考えて悲しくなって…気が付いたら圭ちゃんの首を絞めてた…」

「何それ?」


忘れる?安田を…?


「ホントは圭ちゃんの幸せを願う立場なのに…ごめんね、圭ちゃん」

…やっぱこいつ、何にも分かってねぇ!!

「お前、俺を怒らせてぇの?」
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