俺と葉月の四十九日
「お前何にも分かってねぇ!俺が忘れると本気で思ってんの?!」


お前に首を締められた時…俺が何を思ったかも知らねぇくせに!


「忘れられる訳ねぇよ!絶対忘れねぇ!忘れろって言われても忘れねぇ!ガキの頃からそばに居たくせに、そんな事もわかんねぇのか!」

「圭ちゃん…」

安田は俺を見上げる。
その目に、また涙が溢れていく。

「…やめてよ…そこまで言われたら…この世に未練残る」
「そしたら、また首でも絞めろよ」
「……馬鹿、やる訳ない」
「安田の方が馬鹿だ」

圭ちゃんの方が馬鹿だよと呟きながら、安田は泣き顔を背けた。


ああ、馬鹿だな。
俺ら二人共馬鹿なんだ。


馬鹿だから…こんな風にしか接する事ができねぇ。


隣でうつむき、膝を抱えて泣く安田。

こいつ、こんなに小さかったんだ。

こんなに…弱かったんだ。


俺の方こそ、気付いてやれなくてごめん…。



震える安田の細い肩…静かに手を伸ばした。
抱いてやろうとしてためらい、止めた。

止めて、また肩を抱こうとそっと手を動かしてみた。

だが俺の手は、空中を泳ぐ様に安田の肩をすりぬけた。


触れられない………分かってたはずなのに。
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