俺と葉月の四十九日
安田が濡れる…そう思った。
綺麗な安田が川に落ちて濡れてしまうって。


半泣きの安田の為に、俺は必死でヨーヨーを掴もうと川辺から手を伸ばした。

安田は不安げにそれを見守っていた。


あと少し…もう少し…。


掴むか掴まないかの所でバランスを崩した俺は、川に落ちた。
川は浅くて、俺の腰くらいの深さだったけど。


“圭ちゃんのバカ!”


びしょ濡れで戻った俺を見て、安田は泣いた。

なぜ泣くのか、バカと言われるのか、当時の俺にはわからなかった。

ヨーヨーを取れなかったからバカと言われているのか?そう、俺は思ったんだ。


“葉月ちゃん、ごめんね?ヨーヨー取れなくて”


謝る俺に、安田は泣きながら首を振っていた。
思えば、落ちた俺もビビッたけれど、安田も驚いていたんだろう。

安田は泣きながら…俺の手を引いた。
泣き顔のまま笑って…圭ちゃん帰ろう?って。


照れて手を繋げなかったはずの俺は、その時、安田の手を握り返していた。


ほっとしたのかもしれない。

意地を張っていた自分がバカみたいに思えた。
ホントは、安田と手を繋いで歩きたかったのに。


“圭ちゃん!花火だ!”
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