俺と葉月の四十九日
「ならば触れるはずだ。物体としてではなく、魂で触るのだ」


魂で?…わかんねぇ。


「肉体での感触に頼らず、感覚で掴むのだ。心や魂で感覚を掴むのだ。簡単な事だ」
「簡単じゃねぇ!」


ブル田みてぇに霊感ありゃ分かるかもしれねぇけど、俺には霊感なんて元々ねぇし!


ブル田は、やれやれと肩をすくめた。

「鍛練は必要かもしれんが」

簡単じゃねぇじゃん。


「霊体に触れたいなら、鍛練すればいいのだ。その辺の浮遊霊でな」

浮遊霊でっ?!
そんな鍛練したくねぇ!
第一俺には安田以外のユーレイは見えねぇよ!


けど…ユーレイって絶対に触れない訳じゃねぇんだ?触れないと思ってた。
冷気?みたいなものは感じられたけど、ホントにそれしか知らなかった。


感触じゃなく感覚で掴む…まるで何かを極めるみたいな話だ。

俺は、生前の安田に触れた事はもちろんある。

ガキの頃は手を繋いでたし…中学や高校では、まぁ軽く頭を叩いたり肩を叩いたり。


叩いた記憶しかねぇな。


並んで歩く時は、よく安田の腕や指先が偶然触れたりしていた。

それに対して俺は、触れない距離を保っていた。


嫌だった訳じゃない。
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