俺と葉月の四十九日
嫌じゃなく…ただ、触れてはいけない気がしていた。


ガキの頃とは違うから。

気安く触れたりできなかった。


中学に入って、ガキだからと割り切れない歳になって、気付かない内に…逆に触れない距離を置いていた。


それが大人になっていく事だと思っていた。


いつまでも俺を、幼なじみのガキの頃の様に接してくる安田に、苛立ちを感じた事もある。

あの苛立ちの意味は…もしかしたら自分の気持ちへの苛立ちだったのかもしれねぇ。

俺を男として扱わない安田への、苛立ちだったのかもしれねぇ。

だから距離を置きたかったんだ。


なのに俺は、安田が死んでからそういう気持ちに気付くんだもんな。



いなくなった安田を公園で見つけた時、泣く安田を俺は、抱きしめてやりたかった。


言葉が無意味だと思ったから、抱きしめてやりたいと。


なのに…それさえできなかった。


生きている頃だったら、その頃に気持ちに気付けていたら…俺は優しく安田に触れたりできただろうか。
抱きしめてやれただろうか。

冷気なんかじゃなく、安田の体温も鼓動も感じられたんだろうか。


好きだと…伝える事ができたんだろうか。
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