俺と葉月の四十九日
俺がやる事は決まってる。


安田を捜して声を掛けるんだ。


どんなにたくさん人がいても、必ず見つける。
そして名前を呼ぶ。

それで安田が戻るなら、迷わずそうする。


だってさ、俺はもっと安田とこうしていたい。
来年も再来年も…ずっとこうしていたいんだ。

それ以外の望みは、今の俺には無い。
でも、叶う望みじゃねぇ。


高望みをしてる訳じゃねぇのに…。


「今日私、ここに来れて嬉しかったぁ」

安田が伸びをしながら笑った。
何だ?突然。

「私ね、思い出巡りしてるの」

思い出巡り?


「何?ソレ」
「この世での思い出の場所を確かめてるの。学校でしょ?公園でしょ?その他色々!」

ああ、だから安田の奴、行きたいって騒ぐのか。
そうならそうと言やいいのに。

「ここも巡りたい場所だったんだぁ…でもね、巡るたびに笑っちゃう」
「何で」
「だってさ、私の思い出って、ほとんど圭ちゃんとの共通の思い出なんだもん。圭ちゃんとの思い出ばっかりなんだよ?」

「…………」


俺と安田の…共通の?


考えてみりゃ、俺もそうだ。
思い出の場所に、安田が絡んでる。

全てとは言わないけど、ほとんどはそうだ。
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