俺と葉月の四十九日
「何コソコソしてんだよ」

気付かれたっ!


「別にぃ」
マオちゃんは笑いながら肩をすくめている。


「それよりお兄ちゃん、頭剃らないとまた怒られるよ?夏休み中にって約束でしょ?」


ああ?と聖矢さんは瞳を細めて睨む。

怖ぇ…。


「うるせぇ。経上げて供養できりゃあ頭なんざ関係ねぇんだよボケ」
「聖矢お兄ちゃんだけだよ、そんな理屈言うの」
「理屈じゃねぇよ。つぅか早く出てけよ、説法聞かすぞ?ごらぁ?!」
「説法なんかできるの?破戒僧のくせに」
「グダグダ言ってっとマオの戒名作っぞ?」


戒名?!
どんな脅しだ!

わかんねぇけど何か嫌。


「はいはい、わかりましたぁ」

ため息をついたマオちゃん。
俺と安田を見ながら頭を下げて退室して行ってしまった。

残された俺と安田…聖矢さんを前に沈黙。


だって怖ぇんだよ、何か。

「さてと…」

聖矢さんはあぐらをかき直すと軽く笑い、再びドアの前に立ち尽くす安田へと視線を向けた。

「ねぇちゃん、名前は」

…やっぱ見えてんだなぁ…ブル田んちの家系だしな。

名前を聞かれた安田は、ゆっくりと俺の隣に座った。
俺同様に正座してるし。


「…安田…葉月」
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