俺と葉月の四十九日
テンパり気味の俺とは対照的に、聖矢さんは煎餅をくわえてる。

「ったりめぇだろ?葉月ちゃんは覚悟決めてるみてぇだしなぁ」

覚悟?

「四十九日には、きっちり昇天するってぇ覚悟がよ」

「………」


聖矢さんの言葉に、安田は無言でうつむいている。

「強い未練なんぞ持つなよ?魂の浄化に年月がかかるからよ」

ブル田が言ってた300年の事か。


…安田はもう覚悟してるのか。
四十九日を迎える覚悟を。

俺なんか怖いってだけなのに。


安田を見つめた。
うつむいて、指で髪を耳にかけている。

その横顔は思い詰めている様だ。


…月を見上げている時と似てる。


声、掛けた方がいいのか…?

だが、俺より先に聖矢さんが口を開いた。


「何か俺に聞きてぇ事あんじゃねぇか?」

その呼び掛けに、安田が顔を上げた。
まっすぐ聖矢さんを見つめている。


聞きたい事あるのか?
何かあるのか?安田。


迷う様に震えている安田の唇…。

やがて意を決した様に、安田は息を飲む。


「何で…何で私だったんですか?何で私…死んだんですか?」
「安田……」


何で自分が死んだのか…。

安田はそう聞いていた。
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