俺と葉月の四十九日
「残された奴らが葉月ちゃんの死から学ぶ事、それこそが重要だ。泣いてわめいて、凹んだっていい。そこから学ぶ事がある。
悲痛を乗り越えられた時に、葉月ちゃんの死と言う現実を受け入れて、その意味を学べりゃあ無駄にならねぇ…
無駄なんかねぇ、無駄な事なんか何一つこの世にはねぇんだよ」


聖矢さんは、一口大になった煎餅を天井へと放り投げ、口でキャッチした。
それからコーヒーををすすり、ため息をつく。


「今日だってよ、たまたまリョウが居ねぇから俺って訳じゃねぇ、俺じゃなけりゃあダメだから俺が居る。これも必然。ま、リョウにできる事なんざタカが知れてるってこったな」


すげぇ…何て自信に満ち溢れてんだ、この人。

でも話は何となく聞ける。聞けるって言うか、染みるって言うか…。


マジで坊さんになる人なんだ、聖矢さんって。


「………でも」

うつむいていた安田が細い声を上げた。


どうした…?


「私…」

安田が顔を上げた。

悩む様な苦痛な横顔…。
その表情に、一瞬胸が痛む。


「私…まだやりたい事がたくさんあった…」

「………」


…そうだ。

当然だよな。


あるに決まってるよな。
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