俺と葉月の四十九日
安田は、何にも不満言わねぇで笑ってる。
強がって笑ってる。

安田が怖がっているのは気付いてた。
でも俺は…そんな安田にかける言葉が無かった。

何もできねぇってわかるから、何も言えねぇ。

今だって。


足が消えかかる安田を見てテンパって、こうしてブル田を頼ってここに来た。

何もできねぇ自分を思い知る事ばかり。

やりたい事があった…何で自分は死んだのか…応えてやれねぇ…俺にはわからねぇ。

悔やむ事しかできねぇ!


「やりたい事ね…当然だ。綺麗に昇天できる奴なんざそうそういねぇよ。だからあの世でも修行があんだからな」
「私、死んでいる事もわかります。昇天しなきゃいけない事も…でも考えちゃう…何で私だけなのって…」


わかる…安田の伝えたい事は俺には分かる。

何で安田なんだ?
俺だって同じ気持ちだ。


「おめぇら、俺のありがたい話聞いてたのかよ」

沈黙する俺と安田を前に、聖矢さんは舌打ちをし、かったるそうに耳を掻いた。

ありがたい話…自分で言えるトコがすげぇ。


「しゃあねぇ、特別に教えてやる。ガキん頃に、ある坊さんに聞いた話でよ、俺が坊さんになるって決めたきっかけの話だ」
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