俺と葉月の四十九日
安田の返答に、聖矢さんは笑った。

優しい顔で…。


「葉月ちゃんの握りこぶしの中にあったもんは、ちゃんと残ってる…ここにな」

聖矢さんが指したのは、心臓の部分。


「幸せも不幸も、形を変えて残るんだ。良かったと、ありがとうと笑えたら、それは魂の中に残る。成長としてな。葉月ちゃんはそれが分かってる、大丈夫だ。必ず天国へ行ける」

「天国に?」
ああ、と聖矢さんは笑う。

「何にも怖ぇ事なんざねぇ、心配すんな」

安田は…ゆったりとうなづいた。


安田が天国へ行く…。

それは喜びべき事なんだよな?

安田が安らかに過ごす場所として、天国に行く事は喜んでやるべきなんだよな?


…何だ?泣きたくなる。


四十九日には安田は逝く。
分かってた、理解してた。

喜べねぇ…泣きてぇ…。
笑ってんのに、安田は笑ってんのに。

うつむく俺は視線を感じて顔を上げた。
見ると、聖矢さんが厳しい視線を突き付けていた。


「問題はてめぇだ、三谷少年」

…俺?


「自分が何をすべきか、何を乗り越えるべきか、てめぇは理解しちゃいねぇ。理解して見極めろ。ソレがてめぇの成長と宿命だ」


俺の…成長と…宿命?
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