俺と葉月の四十九日
圭ちゃん、圭ちゃん。

…笑う安田。


強がり…にはもう見えなかった。
少なくとも俺には、安田は吹っ切れた様に見えてた。
そうして俺は焦る。
不安になる、怖くなる…。


最初は、安田が安らかに昇天できるために…そう考えてた。

今は、安田が消えてしまう事に焦りを感じている。
多分、現実として別れを意識し始めている。


安田の死という現実が、二人を確実に離す時が近付いているから。


迷い不安に溺れる俺に、容赦無く日は過ぎてく。


朝が来て…夜が来て…。
当たり前の事なのに辛い。

安田がそばに居る事を、当たり前だと思ってたんだ、俺。








「今日はみんなにサヨナラ言いに行く」

四十九日の前日…8月25日。

バイトに向かう俺のチャリ、後ろに座る安田は、呟く様に言った。


「そうか…」
「圭ちゃんがバイト終わる夕方までコンビニに戻るよ。一緒に帰ろ?」
「………」


一緒に帰ろう…。

17年間、聞いてきた言葉。


チャリを漕ぎながら、その言葉の重さを今更ながら噛み締める。


帰りてぇな、安田。

明日の四十九日も一緒に帰ろうと言いてぇ。

ずっと一緒に…一緒に居てぇ。
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