俺と葉月の四十九日
ブル田は、口元にアイスを運ぶ手を止めた。

瞳を伏せ、深いため息をつく。


「…変わらぬもの等ないぞ、圭介」

しんみりと語り出す。


「生きていれば月日は流れる。歳も取る、周りも景色も変化する。自分も変わるし状況も変わる…変化についていけずに居ると、必ず時間を失う、大切な人も失う。変わらない…それは、今ある状況に甘んじて動かない自分を、正当化する言葉に過ぎんのだ」



甘んじて動かない自分?


「変えたくないのならば、努力をしなくてはいけない。変えたい時も同様。変わらないは思い込みに過ぎん。
よく周りが変わったと言う奴がいるが、それは被害妄想だ。変化についていけず、努力を怠った自分を否定しているだけだ」


確かに、俺は努力をしなかったかもしれねぇ…。


安田が変わらずに居たのは、努力をしていたからなのか?

ユーレイになっても変わらずに居たのは、努力をしていたから?


「…前を見ろ、圭介」
「ブル田…」


「貴様は安田サンに甘えていた、頼っていた。だが安田サンは離れて逝く…状況は変化せざるを得なくなる。ここからが圭介の試練だ。これからでもいい、変わって行け。そして生きて行くのだ」
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