俺と葉月の四十九日
思い出巡り
バイトが終わり、ブル田と共に店を出た頃、タイミング良く安田が現れた。


「安田サァ〜ン!」

ブル田が叫び、安田に駆け寄って行く。


瞬間移動の様な速さだ!

あんなに重い足取りだったくせに、安田の前だと跳ぶ様に軽いんだ?
つか、いつものブル田だ。


「ブル田来てたんだ?」
「はいっ!本堂の雑巾掛けをサボって来ました!」

…聖矢さんにボコられっぞ?


「みんなに会ってきたのか?」

問い掛けに、安田はブル田の頭を撫でていた手を止めた。


「うん、みんなには見えないけど」
「そっか」
「でも、ちゃんとサヨナラしてきた」


笑う安田…やっぱ強ぇな、こいつは。


サヨナラしてきたなんて…笑えるなんて。


「挨拶は基本ですよね!さすが安田サン」

基本?何を突然…ちゃんと話見えてるか?


見てねぇだろうな。

安田を前にすると、安田以外には興味無ぇみてぇだもん。
ただ浮かれてるだけって取り方もあるけどな。


「そういやブル田、掃除サボって大丈夫なのか?」

ブル田んちは、寺の掃除がローテーションで回るらしい。

朝の掃除なんかは太陽が昇らないうちから始めるそうだ。

まるで年寄りの日常だ。
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