俺と葉月の四十九日
「行こう」


安田は先に学校の敷地中へと入って行く。

「圭ちゃんも来て」

校門前に立ち止まる俺を振り返る。


伝えたい事…何でもいい。


伝えたいなら聞いてやる。

それが今、安田のしたい事なんだな。
俺は、それに付き合う事しかできないんだから。


振り向いて呼ぶ安田の後に続いた。







安田が向かったのは、学校の駐輪場。

懐かしそうに辺りを見回し、安田は突然立ち止まる。


二年生の駐輪場…その隅で安田は呟いた。

「ここだよね、圭ちゃんがいつもチャリ置いてたの」

確かに、俺はそこに停めていたかも。


記憶をたぐりよせた。


部活が終わり、ここに来る。

安田が立っていて、笑うんだ。


一緒に帰ろう?圭ちゃん。


学校のジャージの上から陸上部のウィンドブレーカー着て、シューズやら何やらが入ったでかいバック下げて。


冬、一度制服のスカートの下にジャージを着てた事があったな。

首には白いマフラーをグルグル巻いて、しかもジャージの裾をルーズソックスの中に入れての完全防寒。


何だソレと笑った俺に、だって寒いんだもんと膨れていた。


夏は…汗の匂いがした。
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