俺と葉月の四十九日
Tシャツに、下はユニフォームのかなり短いショートパンツで…綺麗な脚だなって思ったんだ。


チャリの後ろに乗る安田は、いつも右腕を俺の腰に回してた。

近い距離、安田の微かな汗の匂いに俺は少しドキドキしていた。

それが恥ずかしくて、安田に悟られたくなくて、わざと身体を離してチャリを漕いでた。


何であの時、もっと近付かなかったんだ。

安田の温度、香り…ちゃんと思い出せるくらいに近くにいかなかったんだ。


そうすれば、もっと鮮明に思い出せたはずなのに。


安田が死んでからじゃ…鮮明さを取り戻す事はできない。



あの頃は、まさか安田が死ぬなんて考えもしなかった。

いつでもチャリの後ろに居たから、居なくなるなんて想像もしなかった。


俺は安田を見つめた。


安田は…駐輪場の、俺がチャリを停めていた場所に立ち、うつむいていた。


何を考えているんだろう。


見つめる俺に気付いたのか、安田は顔を上げた。
ゆっくりと俺を見つめ返す。


思わず視線をそらした。

安田の視線はまっすぐで、俺の中の感情を見破られそうな気がした。


好きという感情を。


「圭ちゃん覚えてる?」
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