俺と葉月の四十九日
「何?」

平静を装った俺の声は、微かに震えているのがわかった。


「圭ちゃん…中学2年の時にさ、急に私を安田って呼び始めたよね?」

「………」


…はっきりと覚えてる。


葉月って呼び方を同級生にからかわれて、呼び方を変えた。


安田はこんな奴だから、中学に入ってもガキの頃と変わらない付き合いをする。

俺と安田が付き合ってるって思ってた奴もいたくらいだ。


俺は否定した。

嫌だったんだ。

幼なじみだからとか、そういう見方で付き合ってると思われるのが。


安田は、俺を幼なじみ以上に扱わなかった。
男として見てなんかいなかった。

だから普通にチャリに乗って、俺の腰に腕を回してこれたんだよ。


俺が初めて安田と呼んだ時…それは、初めて安田とケンカした時。


何で急に安田なんだと、お前は怒ったんだよな?

悲しそうな顔して、潤んだ瞳で…泣きたいのを我慢してるって俺は気付いてた。


俺は、お前と距離を置きたかったんだ。


あんまりお前が俺を男として扱わないから、幼なじみの枠から出てみようかと思ったんだ。



でも、安田は変わらなかったな。



変わらなかったんだ。
< 239 / 267 >

この作品をシェア

pagetop