俺と葉月の四十九日
その日の放課後、安田はここで…俺のチャリの前で待ってた。


「一緒に帰ろ、圭ちゃん」


その時の季節は冬で…。

雪が降り出しそうな寒空の下、マフラーに顔を半分までうずめて、寒さで頬を赤くしながら安田は立ってた。

ケンカした事なんか、忘れるくらいの自然さで。

笑いながら…。


俺のチャリの後ろ、回してきた安田の手は震えていた。

どのくらい待っていたんだろう。
そんな事を考えながら、俺はチャリを漕いでいた。


「ねぇ、圭ちゃん…私達ずっと幼なじみだよね?」


俺の後ろで安田は呟く様に聞いてきた。

「……」

俺は、それに返答できなかった。


ずっと幼なじみ。


それは、これからも変わらない俺達の位置関係を示すものに思えた。


俺はどうしたい?
安田をどう思っているんだ?

考えたら返答できなかったんだ。


聞こえなかったのかなと言う安田の独り言も聞こえてた。

聞こえないフリをした。

答えられなかったから。


「圭ちゃん…」


風に掻き消される様な小さい呼び声。
腰に回された安田の腕に力が入るのを感じてた。


そして、安田が顔を俺の背中に押し付けてきた感触も…。
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