俺と葉月の四十九日
俺は安田を振り返る事ができなかった。
耳の奥、聞こえていた自分の鼓動しか意識していなかった。
安田に気付かれたくない。
それしか頭に無かった。
「私あの時、圭ちゃんの背中で泣いてたんだ…」
安田の言葉で、俺の意識は戻された。
「…泣いてた?」
安田はうなづき、地面に視線を落としながら言った。
「私、圭ちゃんにはずっと近くに居てほしかった。変わらずに近くに居てほしかったから」
近くに…?
「圭ちゃんは、私が信用するただ一人の男の人。圭ちゃんが居る…それだけで安心できた。私がどうして、いつも圭ちゃんにチャリに乗せてって言ってたかわかる?」
俺は首を振った。
そんな俺を見つめ、安田は瞳を細めて笑った。
「圭ちゃんの背中が大好きだった…近くに居るって安心できる大きな背中が好きだった」
「………」
「チャリの周りの冬の冷たい風もね、圭ちゃんが前に居てくれるから私は寒くなかった。守られている様な気がして安心できたの」
…そんな風に考えていたのか、安田は。
わからなかった、気付かなかった…守られているのは俺の方だと……。
いつも、安田に励まされていたから。
耳の奥、聞こえていた自分の鼓動しか意識していなかった。
安田に気付かれたくない。
それしか頭に無かった。
「私あの時、圭ちゃんの背中で泣いてたんだ…」
安田の言葉で、俺の意識は戻された。
「…泣いてた?」
安田はうなづき、地面に視線を落としながら言った。
「私、圭ちゃんにはずっと近くに居てほしかった。変わらずに近くに居てほしかったから」
近くに…?
「圭ちゃんは、私が信用するただ一人の男の人。圭ちゃんが居る…それだけで安心できた。私がどうして、いつも圭ちゃんにチャリに乗せてって言ってたかわかる?」
俺は首を振った。
そんな俺を見つめ、安田は瞳を細めて笑った。
「圭ちゃんの背中が大好きだった…近くに居るって安心できる大きな背中が好きだった」
「………」
「チャリの周りの冬の冷たい風もね、圭ちゃんが前に居てくれるから私は寒くなかった。守られている様な気がして安心できたの」
…そんな風に考えていたのか、安田は。
わからなかった、気付かなかった…守られているのは俺の方だと……。
いつも、安田に励まされていたから。