俺と葉月の四十九日
「だからね、安田って呼ばれて悲しかった。距離を置かれた気がして、もう近くに居てくれないのって…幼なじみってそうなのかなって」


瞳を伏せて笑う安田。

その顔が淋しそうで、綺麗だけど悲しそうで。


…抱きしめてぇ。

思いきり…抱き潰すくらいに抱きしめてやりてぇ。


…できない。


ユーレイになっちまった安田を、俺は抱きしめてやる事すらできねぇんだ。


悔しい…。

悔しくて情けなくて、こんな自分が吐き気がするくらい嫌だ!


守られてるなんて思っていた安田…今の俺には守る事ができねぇ。

もっと早く自分の気持ちに気が付いていたら、安田の存在が大切だと気付いていたら…安田にこんな思いはさせなかった!



俺は安田を、この世の悲しい事から全力で守った。

そばに居るからと抱きしめてやれた。



「……チクショ…」

地面にしゃがみ込み、膝で顔を隠した。


「圭ちゃん?」

除き込む安田から顔をそらす。


泣き顔…見られたくねぇ。


泣かない様に……張り詰めた糸が切れた。

俺の意志に反して、涙は全開の蛇口の様に溢れ流れてくる。


悔しいよ、安田…。


自分が情けねぇよ。
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