俺と葉月の四十九日
「…泣いてるの?」

「うるせぇよ…」


そういう事聞いてくるなよ。
お前デリカシー無ぇぞ?



安田は、うづくまる俺の隣に座った。
膝を抱えながら、ぼんやりと夜空を見上げる。


「もしも今、一瞬だけ願いが叶うとしたらどうする?」


急に何を言い出すんだ?


思わず、少し顔を上げて安田を横目で見つめた。

安田は、月を見上げていた。

透けた身体が、光を吸い取っているみたいに光ってる。


「私、今だけ身体を与えて下さいって願いたいな」

「……何で?」

聞いてみた。


「今、身体があったら…圭ちゃんを抱きしめてあげられるからさ」


…この…バカ女。


「お前…少し黙ってろ…」

余計に涙が止まらなくなるだろ。



抱きしめてやりたいのは俺の方だ。



…安田、好きだよ。


お前は幼なじみとしてしか見てないだろう?


男としての俺を、悲しいくらいお前は求めていないかもしれない。

ずっとそばに居て…お前のその言葉はたぶん、俺の意味とは違うものだろう。



でも俺は、お前が好きだ。


俺は…お前を特別だと思ってる。



今更言えない言葉だけど…。


…好きだよ、葉月。
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