俺と葉月の四十九日
あっという間だ。

あっという間…。


17年間生きても、消えるのは一瞬。

そんな簡単に消えたら…マジで安田の人生って何って思っちまう。


産まれて、生きて、死んでいく…人間のサイクルは単純。
でも、生きている間に人との繋がりができちまうから、単純に割り切れなくなる。

生きる上で、人との関わりを避ける事は不可能だから。

中絶される胎児だって、母親と繋がりができてるんだ。


笑って生きてきた奴なら尚更人と繋がってる。


当たり前だけど、だからこそ悲しい。


でも、安田は言った。


楽しかった…って。


安田の楽しかったは、簡単に言った事じゃない。

生きていた時を振り返り、今の自分を見つめて、そうして出た言葉だ。


だからこそ重い。


俺も、安田と過ごせた時間、思い出…楽しかった。
楽しかったからこそ、過去にするのが辛いんだ。



昨夜…俺は初めて安田の前で泣いた。

泣かないと決めていたのに…安田に泣かされた。


俺は、お前を守りきれてなかったよ。

わざと避けて距離を置いた。
意地悪した事もある。



そして、一度もお前を抱きしめる事ができなかったんだ。
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