俺と葉月の四十九日
何で俺の近くを選んだ?


…それを聞いてどうなる。

どうにもならないな。


俺は再び、窓の外に視線を移した。

雨はまだ…止みそうになかった。








「僕は帰ります」

夕方、ブル田が言った。


昨夜からずっと安田と遊んでいたブル田は、昨日コンビニに顔を出した時より晴々とした表情をしていた。
ブル田なりに、安田との別れを受け入れられたんだ。

「帰んのか?」

妙なくらいに俺は不安になっていた。
安田の身体がだいぶ透けてきていたから。


もしかしたら、ブル田も昇天に立ち会うのではないか。
そんな期待があったのも事実。


…怖かった。

怖くなってきていた。


受け入れる事ができるのか…見送る事ができるのか…。


俺は、かなり情けない顔をしてたんだろう。
ブル田は笑った。

笑いながら、俺の前に右手を差し出す。

少し潤んだ瞳で握手を求めてきたブル田。


「頼む……圭介」


頼む……。

その言葉は重かった。
見送らないと言っていたブル田…俺は気付いた。

ブル田はわざと、俺に安田を送らせるつもりだ。


最初から。


「…ああ」

俺は、ブル田の手を握り返した。
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