俺と葉月の四十九日
「すっごく楽しかった!」


ブル田は…大きく手を振り返してきた。
その後、手の甲で目を擦り歩いて行った。

泣いてるんだ、あいつ。


…ありがとうブル田。

俺に安田を見送らせてくれて。


「…行っちゃった」

振っていた手を静かに降ろし、安田は呟く。


少しだけ、淋しそうな瞳で。


「圭ちゃん…」
「何だ?」
「私の最後のお願い、聞いてくれる?」


最後の……。


「ああ…何がしたいんだ?」

本当に、最後のお願いになるんだ。

安田は顔を上げ、俺を見上げた。


「花火がしたい」
「花火?」


そんなので…いいのか?


「圭ちゃんと遊んだ公園で、二人で線香花火がしたい」


安田の最後のお願いはあまりにもささやかで…ささやかすぎて…。

俺は、込み上げてくる鼻孔の奥の痛みと、熱くなってきた目を必死で押さえた。

もっと、ワガママ言ってもいいのに。


「わかった…やろう、花火」
「うん」

安田は、また笑った。
嬉しそうに。









俺と安田は、コンビニで線香花火を二束買った。

ライターと共に握り締め、夜の公園へと向かう。


「ベンチの前でやろう」

言われ、ベンチに座る。
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