俺と葉月の四十九日
なぁ、安田。

俺達別れるんだな。

これから気が遠くなる年月、お前が居ない毎日を過ごしていかなきゃならねぇんだな。


安田…。


お前はもう、俺のチャリには乗らないんだな。

俺を駐輪場で待つ事はないんだな。

一緒に帰ろうって、言わないんだな。

安田…安田。


…葉月。

…好きだよ。


多分、俺にとっての初恋。

愛と言える程に関係は縮まってはいないから…愛してるとは言えねぇ。


だからこそ初恋。


葉月。


お前のワガママも、スネると唇を尖らせるクセも、気まぐれで強引な所も…笑顔も泣き顔も怒った顔も…圭ちゃんと呼ぶ声も…。


好きだ。

愛しくて愛しくて…。


「なぁ…葉月」

呼び掛けに、安田は瞬きをした。
ゆっくりと俺を見る。


「…え」
「葉月」

安田は驚いていた。


「びっくりしたぁ」
「うん」
「葉月なんて呼ぶから」
「うん…」

俺はうつむいた。

「どしたの?」
「うん」
「何?何かあるなら言って」
「………」

顔を上げた。
俺を覗き込んでくる葉月の顔が見えた。


葉月、俺もワガママ言っていいかな。


最初で最後…。


「…キスしていいか?」
「……え?」
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