俺と葉月の四十九日
魂の深くで、葉月の存在を確かめるんだ。

触覚じゃなく…感覚で…。

葉月はここに居る。
俺の隣に居る。


近付く葉月の気配…俺は瞳を閉じた。



ふっと…唇に感覚が伝わった。

それは冷気なんかじゃなくて、ふわりとした…微かに温かい…。

儚いくらいに柔らかい…。


「…嘘」


安田が唇を押さえ、瞳を見開いた。

「今わかった!触れたのわかった」
「できるって言ったろ」

疑ってなかったよ、俺は。

お前に…キスしたい。


「すごい…びっくり」
「ああ」
「圭ちゃん、もう一回して」
「は?」
「まぐれじゃないか、セカンドチャレンジ!」


思わず吹き出す。

「お前、ホントにバカだな」
爽やかにリクエストしやがって。

俺の気持ちも知らずに。


俺は、二回目のキスをした。

それは一回目よりもリアルで、まぐれでも何でもない事を証明する。

離れかけた唇を近付けて…三回目…四回…葉月の存在を確かめたいんだ。


こうして…キスをした分だけ、俺の命が葉月に与えられたらな。

それが叶うなら、俺はたくさんこうしてキスをする。


ずっと笑っていてくれよ。


一緒に帰ろう…葉月。

俺と帰ろう。
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