俺と葉月の四十九日
帰りたいよ、お前と。

一緒に笑って、手を繋いで生きていきたい。
歩いていきたい。

葉月…。


何回キスしただろう。
俺は、肩を押し戻される感覚で我に返った。

押し戻したのは…葉月。


うつむく葉月…肩が震えている。


「葉月?」


呼び掛けに、葉月は顔を上げる。

葉月は泣いていた。
ひゃっくりを上げながら、静かに…。


「圭ちゃん…圭ちゃんのキス……切ない」

……葉月。


俺は葉月に手を伸ばした。


泣くな…そんな風に切ないなんて泣くな。

葉月。


指先が葉月の頬に触れる瞬間…。
透けていた葉月の身体が光り始めた。

蛍の様な光の粒が、舞う様に葉月を包み込んでいく。


まさか……葉月。


「時間だ」

葉月は立ち上がり、夜空を見上げた。

光は更に強さを増していく。


「葉月!!」

俺は必死で腕を伸ばした。

戻さなきゃ、掴んでやらなきゃ!

頼む!葉月を連れていかないでくれ!
そいつは俺の…俺の大切な奴なんだ!

帰してくれ!
俺にそいつを守らせてくれ!


お願いだ!
奪わないでくれ!


「葉月!こっちに来い!」

俺が掴んでやる!


離さないから!
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