俺と葉月の四十九日
俺は聞いてやる事も、笑顔も返せないまま見送ってしまった。


また…後悔。
後悔ばかり。

情けねぇ…俺。








一ヶ月半ぶりの学校。

日に焼けた学生、騒々しいくらいの活気と熱気。

飛び交う会話、笑い声。


はっきり言って違和感しかない。


何でみんな普通にしていられるんだ。


2-Aの教室の前に差し掛かり、俺は足を止めた。

葉月の居た教室。

通り掛かるといつも、葉月は気付いて手を振っていた。

思いきり振るから無視できなかった。


あいつが居ない今になって、俺は立ち止まってる。

今更だな。


「圭介!」

呼ばれて踏み出した足を止めた。

ブル田…。


「安田サンを見送ったのか」
「ああ…」


俺は笑った。

それは自分でもわかるくらい不自然な笑いで、察したブル田はそうかとうなづいただけだった。

正直助かった。
今は、あいつを語れない。

「圭介」
「何」

ブル田は切なげにため息をつき、視線を教室の中へと向けた。

「安田サンの机、撤去された」

「……そうか」


教室を見る。

葉月が座っていた机。
そこにあったはずの位置には、違う生徒の机が置かれていた。
< 258 / 267 >

この作品をシェア

pagetop