俺と葉月の四十九日
マオは妊娠7ヶ月。
子供も産まれる。
迷ったけど、決めた結婚だった。


決めたのは、マオの言葉。

「特別じゃなくていい、私を好きでいてくれるだけでいい」


マオは俺の特別の意味を理解していた。

全て受け入れると…。


それがどれほどの覚悟か、俺には痛い程伝わっていた。


…先に逝くと言った葉月の覚悟と似てる。

そう感じた。


でも、マオはマオ。
俺の大切な妻であり家族、そしてもうすぐ母になる。

幸せだと思う。


でも、葉月を忘れる事はない。



俺はブル田と、毎年8月26日に葉月の事故のあった場所へ行き、手を合わせるのが大事な行事になっていた。


命日ではなく、葉月が昇天した日にしたのは、俺とブル田共通の思い出が葉月と過ごした四十九日だから。


途中で買った花は、葉月が好きだった黄色のガーベラ。

ブル田と二人、それを事故現場へと手向け、手を合わせる。


10年。

長い様で早かった。

俺達は、変わらずにここに来るだろう。

来年も再来年も…ずっと、生きている限り。


「そういえば、子供の名前は決まったのか?」

合わせた手を下ろしながらブル田が聞いてきた。
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