俺と葉月の四十九日
「ごめんね…私、自分の事ばっかで。映画も一緒に行けたらなぁなんて…」
「いや…その…」


…マジ?


こんなしおらしい安田、初めて見た。


考えたら安田は時間ないんだよな。
四十九日には行かなきゃいけねぇんだもんな。
そりゃ焦るよな。


俺、何も考えてなかったかもしれねぇ…安田の事。
いつもの安田のわがままだなんてキレたりして。


わがままじゃなくて、限られた時間でやりたい事をやりたいだけなんだ。
人生ゲームだってそうだよな。
死んでる奴なのに人生ゲームだもんな…。

安田なりのメッセージなのか?


…悪かったな、俺も。



「安田」
「…何?圭ちゃん」

うつむいたまま返事してる。
見られたくねぇのか。


「悪かったよ…俺、キレたりして。時間ないんだよな?映画、観たいんだろ?」

こくんと、安田はうなづく。


「連れてってやるからさ。誕生日だもんな?」
「…ホント?」
「ああ」
「起きてくれるの?」
「起きるよ」


安田は顔を上げた…って笑顔じゃん!!


「起きれるなら早く起きてよ!私がつまんないから」


嘘泣きかよ?!
満面の眩しいくらいの笑顔じゃん!!

騙されたのか?!俺!!
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