Vanilla Essence
今が初対面なはずなのに、こうして甘いものの話になって。
目を見つめられながら「大好き」と言われた。…自分に言われたわけではないのだが、なんとなくドキッとしてしまう。
「そ、なんだ…」
「うん。あ、その飴、私もほしい」
紗由美が、昂に言う。それなりに身長差があって、自然に上目遣いとなってしまう。
昂の心臓は、ドクドクと速く、脈を打ち始めた。
(何だ、これ…)
まるで、自分がおかしくなったみたいだ。
そう思いだからも、心を落ち着けようとする。
もう、飴は持っていないと言うと、「そっか…」と紗由美は残念そうに言った。