Vanilla Essence
「…ほら」
手ぇ出せ。
有無を言わさぬその口調に、紗由美はぱっと両手を差し出す。その上に昂の手が乗って、握られていた何かを紗由美の手のひらに乗せた。
それは、甘い、甘い、バニラ味の飴。
「……え?」
「この前、欲しいって言ってたじゃん?」
だから、持ってきた。
紗由美が驚いていると、昂はそう言った。
いつ会うかも分からないのに、こんなに大量の飴を持っていたのかと、両手に乗っている飴を見て思う。
だが、それも束の間であり、瞬く間に笑顔となった。
「ありがとう!!」