Vanilla Essence
2人は、あと5分で学校に着くであろう場所を、談笑しながら歩いている。
その時、紗由美のすぐ横を、男が2人すれ違った。
紗由美は、思わず振り向く。
「どうかした?」
「ううん…何でも…」
訝しげな表情をして訊く珠希に、紗由美はそう答えてまた前を向く。
普通の男であれば、決して、絶対に、紗由美が振り向く事など有り得なかった。
紗由美にそうさせたのは、思わず鼻につく程の、甘ったるい香り。
紗由美の大好きな、
バニラの匂い…――――