10年彼女

美波のキモチ

私が彼に出逢ったのは、高校入試の日。

その人のことは、何も知らない。

ただ、とてもカッコよかった。

彼は、まだ蕾にもならない桜を、悲しげな瞳で見つめていた。

どうして、そんな悲しい瞳をしているの?

私の疑問は、口には出せず、のどで止まっていた。

言葉が出ない。苦しくて、苦しくて。

高鳴る鼓動が、顔を赤らめていく。

私はその時、気づいていなかったんだ。

その瞬間、人生最大の、恋をしていたことに。

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