草食系鈍感彼氏の射止め方
そういえば響の制服にラケットケースを背負っている姿はよく見ていたけれど。
ユニフォーム姿の彼は見たことがない。
ちょっとドキドキ。
ゆっくりとコートの中にいるはずの彼を探す。
あ、いた。
響はちょうどベンチでテニスシューズの紐を結んでいるところだった。
後姿だったけれど間違いない。
「響…」
アタシは小声で名前を呼んだ。
紐を結び終わった彼は立ち上がり観客席のほうを見た。
そしてアタシに気づくと嬉しそうに被っていたキャップを脱いでラケットを振り回しながら
「来てくれてんなぁ!」
と応えた。