首筋にナイフ


「はーい!」


と言って彼女は手櫛をしながら(やはり寝癖だったか)オレのところまでやってきた。


なぜだろうと一瞬思ったが、オレの隣の席だけが空いていたからということですぐに解決した。


彼女は席に座り、オレの方を向いた。


思わず目があってしまい、気まずいのでそらす。


肌が焼けていて、すごく健康そうな女子だ。


もしかしたらスポーツで入ってきたのか?


なんて考えていると、肩をトントンと叩かれた。


仕方ないので彼女の方を向くと、彼女は満面の笑みで

「隣の席になったのも何かの縁だよね! よろしく!」

と言った。


あぁ、分かってる。


つくづくオレは安い男だと思う。


そんなオレが恋に落ちるには、彼女の笑顔は十分すぎた。






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