―偽愛―
『広海』
アタシは泣きながら目を覚ます
“ひろみ!!大丈夫か?!”
アタシの目の前には あたふたしている中年の小太りの女性
窓の外には緑いっぱいの山と 少しばかり見える青い海
そして アタシがいるのは…
きっとここは 病院の一室
前にふたつの空のベッドと 隣りには点滴を挿したまま男の人が寝ている
ベッドには『原 海翔』
…どこかで 聞いた名前…
アタシの左手には 白の包帯がグルグル巻きにされてある
“痛っ”
少し動かすだけでも 痛い
バタバタと中年の女性と 看護士らしい女性が走って入って来ては アタシの方を見て
“大丈夫?”
と、聞いてくる
アタシは 大丈夫だけど… 一体 何事?
隣りの男の人も 慌てて起き上がり
“ひろみ…大丈夫か?”
って 聞く
…あっ。アタシこの人の声に聞き覚えがある
それに…アタシ ひろみって名前なんだ…