―偽愛―
広海の様子を1時間おきに見に行く
身体が悪いわけじゃないけど…
少しでも 記憶が戻るなら…
夕方… 忙しい時間が一段落した頃
広海の様子を見に行くと 母ちゃんが話しかけてきた
“原さん…広海に商店を教えてやってもらえるかな…?”
“あっ…はい。”
広海は、少し照れくさそうに 俺の後ろをついて来た
“原さん?原さんって家族がいらっしゃるんですよね?ご家族は一緒に来てないんですか?”
あまりにも よそよそしい広海
“家族…家族ならおらんよ…離婚したんだ…。……ところで…手を繋いでもイイ?”
顔を紅くする広海
“えっ!?もしかして…アタシと原さんって…付き合ってたり…?”
どう答えて イイのか分からん。
“…うん。そうじゃ”
“そうなんだ…”
広海は ためらいを払いのけ さり気なく、俺の手を握った
変わらない広海の手
いつになったら 記憶は戻るんかな?