―偽愛―
―現実―
『海翔』
夜 民宿で晩飯を食べた後の事
ピピピ ピピピ
携帯がなる
携帯の画面には 『紗恵』
一瞬ためらいながらも 出てみる
“もしもし…”
“パパ。パパ…”
竜太の声が遠くから聞こえる
“アンパンマン…パパ…パパ”
紗恵の携帯で遊んでいるのだろう…
“…竜太……ごめんな…”
竜太からのいたずら電話…
だけど きれない
涙が溢れそうになる
“竜太…ごめんな…”
何度 謝ったところで俺がした事は許されたもんじゃない
“…ごめんな…竜太”
一言 言って
電話を切った
堪えていた涙が どっと溢れる
嗚咽がするほど こんなに辛いのは…きっと両親が亡くなった時以来だった