―偽愛―




トントントン



ドアを叩く音




なんやろ…



慌てて涙を拭い ドアを開ける


“広海ちゃんが来てるよ…”


この宿のおばちゃんが不思議そうな顔して言う



“あぁ。…通してもらえますか?”



“伝えますね…”



おばちゃん ドアをゆっくり閉めていく






何分かして 広海が入ってくる




“どしたん?”


広海は何も言わずに 抱き付いてくる



“ど、どしたん?”


“ごめん…急に来て…”



俺達は 互いに何も言わずに ただ抱き締め合った




言葉なんて いらない…


…ただ こうやって抱き締めてくれるだけで…




俺は それだけで幸せじゃ…






俺 …広海の為にそばに居らんといけんって思うとったけど…



本当は…





俺が 広海を求めとんじゃ…




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