―偽愛―



降りた駅は アタシ達が乗った駅から四つ行った駅で


そこを降りて 今度はタクシーに乗り20分ほど走り 最後はロープウェイに乗って山を上った





“キレイ!!”


山の頂上から見るのは 初めてだった


赤や黄色に染まった紅葉と 海の色と 夕日とが 言葉に出来ないぐらい綺麗


アタシはあまりの綺麗さに 感動していた

“綺麗だね…海翔?”


“うん…そうじゃな”

久し振りに海翔が笑った


“海翔…久し振りだね?”


“ん…なにが?”


“笑うの”


“そっかなぁ…”


また 今度は照れて笑う海翔



アタシは嬉しくてたまらない

アタシも嬉しくて笑っちゃう それにつられて海翔もまた、笑う


ふたりで、思いっきり笑い合う

…あの頃みたい…




“海翔…また来ようね”


“おぅ。また来ような”




“オカン…ありがとう。連れて来てくれて…本当にありがとう”

一瞬 オカンの顔が曇った




ヤ、ヤバい… オカンって言っちゃった
アタシ 記憶無くしてから《母さん》って呼んでた… バレたかな?




それから オカンの様子は変わらなかった




アタシはバレてないものだと 思っていた




それから 3人で少しばかりのピクニックを楽しんで 家に向かった



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