―偽愛―
“なぁ…海翔。”
沈黙に絶えきれずアタシから話し出す
“………。”
怒ったような 困惑したような 海翔の顔
“アタシな。海翔の事が嫌いになって別れるんじゃないで……。海翔の事、今でもメチャクチャ好きじゃ。もう、好きって言うよりアタシには居らんといけん存在なんよ。…じゃけどな…じゃけど。海翔の心はアタシんトコに居らん……。海翔の心は竜太くんで、いっぱいじゃ。
…アタシの事で心いっぱいにしとってくれんと……寂しい。どんなにそばに居っても、そばに居らんみたいで寂しかった。”
…これがアタシから海翔に向ける最後の精一杯の笑顔…
絶対に泣かない
“…広海。ごめんな……。ほんまにごめんな…”
“謝らんとって。謝られたら…余計、寂しくなるけん…”
“そうか…。”
たった10分という時間が どれだけ長く感じただろう
プルルルル プルルルル
ようやく電車がやって来た
“…海翔。ここでさよならじゃ…”
不意に海翔がおでこにkissをする
泣きそうになる
だけど…アタシ
絶対に泣かないって決めたんだ
泣かない
笑顔で見送るんだ…