―偽愛―



“なぁ…海翔。”


沈黙に絶えきれずアタシから話し出す


“………。”


怒ったような 困惑したような 海翔の顔


“アタシな。海翔の事が嫌いになって別れるんじゃないで……。海翔の事、今でもメチャクチャ好きじゃ。もう、好きって言うよりアタシには居らんといけん存在なんよ。…じゃけどな…じゃけど。海翔の心はアタシんトコに居らん……。海翔の心は竜太くんで、いっぱいじゃ。
…アタシの事で心いっぱいにしとってくれんと……寂しい。どんなにそばに居っても、そばに居らんみたいで寂しかった。”


…これがアタシから海翔に向ける最後の精一杯の笑顔…


絶対に泣かない





“…広海。ごめんな……。ほんまにごめんな…”


“謝らんとって。謝られたら…余計、寂しくなるけん…”


“そうか…。”








たった10分という時間が どれだけ長く感じただろう






プルルルル プルルルル


ようやく電車がやって来た


“…海翔。ここでさよならじゃ…”




不意に海翔がおでこにkissをする



泣きそうになる






だけど…アタシ


絶対に泣かないって決めたんだ


泣かない



笑顔で見送るんだ…




< 146 / 157 >

この作品をシェア

pagetop