―偽愛―
とっさに涙を拭い 何もなかった顔をして 部屋から出ようとした
その時だった…
曲は途中で終り ラジオからはDJの声が聞こえる
《―さんの偽愛という曲でした。リクエストは32才の会社員、原 海翔さんからでした。》
…… 原 海翔 ……
今確かに 原 海翔って言った…
もう…
アタシの涙腺は全開になって マンガみたいに涙が滝のように溢れていた
“だ、大丈夫?”
あまりのアタシの泣きように 森田さんはびっくりした様子で アタシに聞く
“だいじょうぶです”
アタシは声にならない声で そう言い残し部屋を出た