―偽愛―
どうにか ありったけの力で部屋を出た
だけど その力は階段までの、僅か5歩まで続かなかった
……原 海翔……
その名前を聞くだけで 身体が反応する
1年が過ぎても アタシの心も身体も、海翔を忘れていない
ア・イ・シ・テ・ル
あの時の海翔の顔がさっきの事みたいに、鮮明に思い出される
“海翔…”
アタシは 子どもみたいに泣きじゃくった
ギシギシ ギシギシ
階段を誰かが上ってくる
“…ひろみ…”
アタシは 鼻水や涙でグシャグシャになった顔を上げた